私たちは日々、思い通りにいかない出来事や、感情の波の中で生きています。
「イライラしてしまう」「落ち込んで動けない」
そんなとき、どうすれば心を静かに保てるのでしょうか?
ヨガ哲学は、この問いに対して明確な答えを示してくれます。
それが「サマトヴァ(Samatva)」平常心の教えです。
サマトヴァとは?―心の平静さ
サンスクリット語で「サマトヴァ」は、平等なまなざし、心の静けさを意味します。
どんな出来事も、「良い」「悪い」とジャッジするのではなく、ただありのままに受け止め、心を乱されずにいる姿勢です。
これは、「何も感じない」という無感情ではありません。
むしろ、心が揺れても、すぐに自分の中心に戻ってこられる力のことです。
バガヴァッド・ギーターの教えより
インドの叡智書『バガヴァッド・ギーター』には、こんな言葉があります。
「成功も失敗も同じ心で受け入れる者こそ、真のヨーギーである」
(第2章48節)
この言葉が示すのは、結果に執着せず、ただ行為に集中する生き方です。
評価や結果がどうであれ、「今の自分ができること」に誠実でいることが、平常心を育てる道となります。
サマトヴァを育むヨガ的習慣
日常の中で「サマトヴァ」を育てるには、小さな習慣が大きな鍵になります。
1. 深い呼吸
焦ったときこそ、呼吸を意識してみてください。
「吸って、静かに」「吐いて、手放す」。
その繰り返しが、心の揺れを落ち着かせてくれます。
2. 瞑想や静かな時間
1日5分でも、スマホを置いて、静かに瞑想する時間を作ってください。
過去や未来にとらわれない時間を持ち、「今」に集中します。
3. 結果にとらわれない
結果よりも「今この瞬間に心を込める」ことを大切にすると、サマトヴァが芽生えます。
料理や掃除の時間も含まれます。
4. サットヴァ(純粋)な生活習慣
消化に良い食事を摂る、朝の光を浴びる、穏やかな音楽を聴くなど、身体と心が喜ぶもの選ぶことで、内側の静けさは自然に整っていきます。
平常心とは、「魂」とつながること
心の平静とは、自分の本質=アートマン(魂)とつながること。
私たちの本当の姿は、静かで穏やかで、揺るぎない存在。
どんなに外の世界が乱れていても、内なる静けさを感じることはできるのです。
「平常心とは、揺れないことではなく、揺れても戻れる力」
日々の暮らしの中で、ヨガや呼吸を通して「戻れる場所」を育てていくこと。
それが、人生をしなやかに生きるためのヨガの知恵です。
あなたの内なる静けさが、今日もやさしく輝きますように。